コアメカニズム2.:基本オペレーションとルール基本的な[{資源}]と[「アクション」]・[『オペレーション』]の例ここまでに導入した[判定]と[判定型]に関する[アクシオム]は十分に強力であるため、[キャラクター]に対するわずかな仮定から幾つかの[オペレーション]が自然に定まることになる。 そこで、以下では[判定アクシオム]の直接の帰結としてそれらをまとめておく。 一般に、この種の短い[オペレーション]は、中心となる[クーポン]とそれを操作するための幾つかの[アクション]から定義される。 以下、特定のゲームタームは基本的にその種別に対応した括弧で示される。主なものは以下の通り 1. 『肉体』肉体的な損傷を表す{耐久力}を中心としたオペレーションは、以下の通り:
2. 『精神』2.1 {魔力ポイント}{魔力ポイント}は、R0 の{ヒーローポイント}であり、また個人の意欲・気力・積極性・活動性・創意工夫等、また肉体的であっても疲労、栄養、休養状態など肉体的損傷として表面化しない部分についてを表示している。 {魔力ポイント}を中心としたオペレーションは、以下の通り:
さらに、『精神』には特殊な{魔力ポイント}である{感情}が定義される。 2.2{感情}{感情}は、PL が宣言し、[判定]したR0 強度の[アクション]が適切な物語 例えば、目の前で剣を振り上げて攻撃してくる相手に対して、応戦を試みる代わりに防御をしつつ説得を試みた場合、{慈悲深い}や{平和主義}といったクーポンとして入手する(このとき、なるべくキャラクターが保有する既存の性格アトリビュートと同じものを優先して選択する)。
3 『情報』R=W における情報は、ナレーションにおける文章情報とディスカッションにおける形式情報に大別されて評価される。 3.1 文章情報ナレーションにおける文章情報は、文章量と持続時間の両方の視点から評価され、
例えば、開けた牧草地において、大遠距離に存在する人間らしき人影に対し〈視力〉判定を試みたとしよう。 通常の成功により、where, when, who, what, how が、即ち、 「村の共有牧草地の外れで、今現在、村人では無い誰かが、氏族の羊を、盗んでいる」 ぐらいの情報が分かるものとする。この情報は、基準ルーン強度における量、時間の両方の基準を満たしている。実際、盗人は次のシーンでは別のところにいるかもしれないから、次のシーンでは既にこの文章は真ではない可能性がある。 一方、クリティカルによりこの情報は 20 文程度、もしくはそもそもその盗人の風体をプロフィールとして記述できる程度の情報が集まり、しかるべき手段(画像を使った聞き込みなど)を用いれば個人が特定できる情報が入手できたとする。この情報も、基準ルーン強度+1 における量、時間の両方の基準を満たしている。実際、盗人のキャラクターシートはセッション中においては不変であるから、判定結果として得た文章はセッション中において真である。 いま、情報の基準として文章量と持続時間の二つを考えることについて、若干付言しておく。R=W ではなく HW/HQ でキャラクターを作成した場合、そのプロフィールは「固有名詞を除く 100 words 以内の文章」からなる。 故に、今 5W1H を埋めた文を 20 程度集めると、およそ対象の持つプロフィール*2が再構成できたに等しい。つまり、量の基準と時間の基準が共に等しいルーン強度を与えることになる。というわけで、R=W においてもこの関係を仮定することで、情報に対しても「20 回の R0 成功で、R1 成功一回と等価かまたはその半分程度の量が入手できる」という関係が維持できる。 3.2 形式情報まず、現実世界において我々が知ることのできる情報は、必ず対象の統計的な情報であるに過ぎないことに注意しよう。故に、仮に現実世界のある量が能力値を持っている場合、 の二つのステップによって、能力値を推定することになる。 今、R0 強度におけるアクションは「原則として、現実世界と同等」と定めているから、このような統計的推量に見合った形で公理化されることになる。すると、基準ルーン強度が R0 程度の場合、能力値 0 〜 19 の範囲であれば、一定の時間確認することでかなり正確に能力値を推定することができるが、それ以上の能力値であった場合は、単なる単独判定の結果を参照するだけではほとんど常に成功しかしないため、正確な能力値を見積もることは非常に困難であることが分かる。 そこで、あるキャラクターが知覚系または解析系アトリビュートの単独判定で成功した場合、 としよう。 これの拡張として、一般に知覚・解析に用いるアトリビュートがルーン強度 r で成功した場合、 とする。 さて、これらをまとめてみると、実はこれは対象の能力値と単純比較判定を行っていることとほとんど変わりがない。故に、対象の能力値を知るアクションに対しては、以下の指針を適用する:
4. 『交換』R=W において、原則としてはルーン強度が等しい判定結果同士の価値は互いに等価である。 しかしながら、これは必ずしもキャラクターの間において判定結果として得られるクーポンの価値について意見が一致することは意味しない。 今、二つのキャラクター X,Y が互いに二つのアトリビュートを、 という値で保有している状況を考える。加えて、〈アトリビュート1〉については X の方が得意(即ち、 a > A )である一方、〈アトリビュート2〉については Y の方が得意(即ち、 b < B)であるとしよう。 すると、X が〈アトリビュート1〉の判定を行ってその結果を Y に与え、一方 Y は〈アトリビュート2〉の判定を行ってその結果を X に与える(即ち、交換する)場合、両者は互いに自分よりもよい結果を得ることができる。 故に、X, Y の双方が互いに相手の持つ得意アトリビュートの結果生成されるクーポンを必要としている場合において、交換がすることで互いに利益が発生する。 この時、交換が発生してそれが利得を生み出すために必要な条件は、X, Y が共に互いが必要なアトリビュートを持っており、かつ相手の方が得意である、ということを確認する = 両方のアトリビュートに対する情報入手であるから、結局、これは 3.2 における形式的情報入手にかかっていることになる。 そこで、以下のアクションを定義する:
5. 『生産』グローランサの1年は、40 週間の通常季節に 2 週間の聖祝季を加えた 42 週間からなっている。ここで、聖祝季は通常特殊な用途に使用されるため、残り40 週間を労働期間とする。2週間に一度の割合で〈労働〉緊迫判定が発生すると、一年間に20回判定が行われることになる。 この一回の判定で、 とすると、一人頭〈労働 10〉でギリギリ生活することができることになる。これを最低限の生活費と仮定しよう(実際にはファンブルが起こるので、魔術を用いてでも失敗を留保に変更していかないと、長く生きるのは難しいが)。 ここから、緊迫判定一回の成功がどの程度の金額の行為かが換算できて、一人あたり4週間分の生活費 = 28 s.p. となる(内半分は生活費、半分が次の失敗用の蓄え)。というわけで、これが基本的な労働行為の相場となる。ただし、当然ながら冒険に対する報酬などはこれよりもずっと低い値になる(当たり前だが、依頼者は状況の調整に伴う報酬を得るし、それにほとんどの緊迫判定は結果として冒険者側の取り分となるため、改めて誰かが報酬をそれに対して払うわけではない)。冒険者の得意アトリビュートがマスタリー程度だとして、一人あたり 20 回の成功回数を最終的に設定するなら報酬は一人頭 600 s.p. となる(これが、戦闘が発生した場合の危険報酬の上限だろう)。実際には失敗分をさっ引かれるので、実際はもっと少なく、100 〜 200 s.p. がせいぜいだろうが。 と同時に、このことから分かるように、マスタリー以上の能力値はとりあえず(ファンブルに対する保険以外の観点からは)無意味である。故に、通常これら高い能力を持つ個体は生産性を増大させるために魔力を使用して生産速度を増強していることが多い(それこそ、バーンターの魔術を用いて英雄 6. 〈縁故〉と{信頼・結束}、『共同体』HW/HQ 系メカニズムにおいては、〈縁故〉は非常に重要な取り扱いを受けるアトリビュートとされる。そこで、以下では〈縁故〉を用いたアクションと、それに付随する資源である{信頼}について定める。ちなみに、《(神の)入信者/帰依者》といった《信仰/Piety》はカミサマに対する〈縁故〉だったりするので(これは HW/HQ のルール)、当然以下のルールにも従う。 〈縁故〉には、大別して
の二通りがある。 この時、対等な場合は双方のキャラクターが〈縁故〉を持ち、そのアトリビュートに付随して{(相手からの)信頼}を考える(都合、一つの関係にアトリビュート、資源共に二つずつ存在する)。 一方、包含関係の場合は、下位のキャラクターが〈縁故〉と{(共同体内部における)信頼}を持ち、一方上位のキャラクターはただリーダーの〈指導力〉と{結束}を持つことにしよう。 {信頼}、{結束}は共に保有するキャラクターの基準ルーン強度に等しい強度を持つ。 一方、〈縁故〉は普通は保有するキャラクターの基準ルーン強度に等しい強度を持つが、場合によりさらに高い強度を持つことがある。例えば、共同体の指導者達は、〈縁故〉として〈(共同体)の指導者〉といったアトリビュートに、共同体側の基準ルーン強度に等しい値の強度を有している。以下、保有キャラクターと共同体の両基準ルーン強度間に差があるなら、中間管理職を表すような強度を有する〈縁故〉を設定することもできよう。 〈縁故〉に付随した{信頼}・{結束}を中心とした諸資源とオペレーションは、以下の通り:
南無*3。 さて、特に人間個体を表すキャラクター(基準ルーン強度 R0)には、{信頼}の他にいわゆる HW/HQ における "Resources and Commitments" に相当する資源である、{コミットメント}が存在する。
この{コミットメント}によって、〈縁故〉を用いて試みることのできるアクションは以下のように制限されている。また、〈縁故〉を用いた緩和判定は、シーン中に{コミットメント}回まで試みることができる。
さて、以上のように{コミットメント}によって〈縁故〉を用いたアクションは制限されるが、一方これを上位の共同体の側から見た場合、共同体は構成員一人あたり{コミットメント}に比例する{ヒーローポイント}を受け取って(そして、消費して)いることになる。 さて、これら〈縁故〉と{信頼・結束}、{コミットメント}を用いたアクションには以下のような例がある:
さて、受け取った側の共同体では、これら下位のヒーローポイントを「統合」して、上位のルーン強度のそれに変えることができる。また、例えば今ここに、互いに相反する{感情}、例えば{恐れ}と{勇気}が共に存在したとしよう。すると、適切な状況においてどちらかを提供することで、見た目両者を一つの{万能な感情ポイント}として運用することができるようになる。 このように、共同体は構成員から受け取ったクーポンを、より一般的な形に加工して保存することができる。この行為を「管理」と呼ぶ。 「管理」は、指導者リーダーによる〈統率〉やその他のスタッフによる〈運営〉に基づき、操作する資源のルーン強度に等しい値のルーン強度で単独判定を行って決定される。成功すると資源の変換(ルーン強度またはクーポンとしての束縛除去)が起こる。失敗すると、(指導者や参謀のアトリビュートの替わりに)共同体の{信頼}または、変換しようとしていた資源に対して打撃が入る。速度は1である。 しかし、別に「同意」は判定だけではなしに、ロールプレイに基づくきちんとした合意によっても得られるわけで、そのように共同体の意志決定結果として協力が得られた場合はきちんと得が出ていることになる。 7. 『信仰』と魔力源さて、6. 『共同体』の特殊な場合として、信仰による魔力が定義できる。 今、《信仰》の成功は、{(神性からの)信用}として発行できる。さらに、このクーポンはそのまま神性の側に蓄える(故に、キャラクターの外部魔力源として使用)することができ、加えて神性は常に「{信用}の引き出し」に対しては無条件で同意する。 故に、もしキャラクターが全ての{信用}を引き出した場合、都合その《信仰》の能力値を[能力値-連続成功回数表]で変換したのと同じだけの{R0 魔力ポイント}に対してアクセスすることができる。また、神性は「管理」に自動成功すると仮定するので、好きなルーン強度配分でこれら魔力資源にアクセスすることができる。なお、神性は{祈り}の他に、{美徳}も管理できる。 そして、これら{信用}は、常に《魔術》の失敗に対する《緩和》に際して消費することができる。 なお、一度消費した{信用}は、寺院において一日祈って R1 強度の《信仰》判定に成功すると、20 pt. 回復する。通常、寺院には{信徒の祈りを支える 0w2、R1}のクーポンが永続的に付与されているので、信徒はこのクーポンとの間で対称協調判定により{信用}を回復させて構わない(つまり、普通失敗は発生せずに留保のみで助かる)。 ゲームの例"ダンバルと愉快な仲間達" は、ルナー帝国は銀の影君主領、ライバンス広域市に存在するエティリーズ系民間調査会社。社長ダンバル以下三名のエティリーズとオスリラの信徒達は、ダラ・ハッパや帝国の内外に関する実勢調査を請け負っている。 さて、ある時ライバンス市はオスリル川の河川改修事業に関与し、ロウドリル系諸建設会社に対する入札に当たり、経済性と安全性の観点からの評価事業を行うこととなった。 しかるに、近年ライバンス広域市は公共事業関連業務の発注に当たり、従来のイェルム さて、市庁府が提示した条件は、3営業週(21日)以内に、オスリル川河川改修に伴う水上交通網拡充に関する中期予測であり、要求能力値は 18 以上相当(連続成功回数9回、判定速度は一日に一回)であった。市庁府としては、およそ 0w1 程度の個人が作業して10日程度で完成に対し、予備として最大二倍の期日を設定したつもりである。 さて、ダンバル以下三名の調査・書類作成能力は全員が 15、期待連続成功回数は3回。一人が挑むと一回で約 7.5% の成功率。単純累積判定を6回(21日÷9日/作業単位×3名、失敗時点で再会するともう少し多くなる)ほど試みられたと見積もっても、40% 弱の成功率しかない。だが、ダンバルには秘策があった。 三人いるのだから、対称協調判定により作業を慎重に行えば失敗確率を減らすことで、連続成功回数 9 回に到達する見込みは十分にあるのだ。少々人件費がかさむが、ライバンス市庁府に〈縁故〉を設けるチャンスである。 若干原価を割れる価格で入札の結果、見事ダンバルと愉快な仲間達は業務を落札することに成功した。これで勝利は手にしたも同然だ(※1)。 かくして三人は業務をこれ一本に絞り、敢然と調査書類作成に邁進することになった。連日会議室で互いのクロスチェックを綿密に行い、書類上のミスを極力排除することに成功する。 が、ここで問題が起こった。ちょっとしたサイコロの不運で、連続成功回数6回(現在、{調査報告 17}が手元にあることになる)を数えたところで、締め切りがあと6日を切ってしまった!(※2) ダンバルは歯がみをした。こうなると分かっていれば(※3)、途中で惜しみなく《魔術》を投入し、個別の単独判定失敗を緩和していたというのに!(※4) さて、とにかく時間は巻き戻らないので、善後策を模索してみよう。 まず、デス・マーチ(←全精力={魔力ポイント}を使い切ること)はデフォである。 と、これは確かに速度を上げるが、難易度も上げてしまう(※5)。実は、留保が重なるだけなので、単独ではほとんど時間効率が向上しない(加えて、最終的なファンブルの可能性を高めてしまう)。 もっとも、速度を増強した後に、下位の判定を積極的に緩和した場合、緩和に投入できる{魔力ポイント}量が上がるから、若干は効率が上がるかもしれない(最早6日しか無いため、一人頭魔力ポイント 20 を使い切るにはかなり無理をする必要があるのだ)。この方向の場合、デフォルトの{魔力ポイント}に加え、積極的に〈性格〉やら〈縁故〉やらを通じて魔力をかき集め、投入する必要があるだろう。 ただ、実のところ既にして赤字確定の事業なのである。ここで更にがんばって、取引先だのから〈縁故〉を通じて前借りしたりしたら、どうなるか……。この仕事は終わっても、自転車操業が苦しくなるのは目に見えているのである({魔力ポイント}が尽きると、失敗にことのほか弱くなることに注意)。社長としては、この選択肢は難しい。 しかし、ここでもダンバルはイイアイディアを思いつくのである(※6)。 ※1: ダンバルは〈自信過剰、弱点〉を有している。 ※2: 実際のところ、能力値 15 、三人間対称協調による累積判定は、留保が 52.25% もの高率で発生する。統計分布の分散を考えると、ダンバルの目論見通りに締め切りをクリアできる確率は、とてもではないが楽観できるものではない。 ※3: だから分かってたって。 ※4: 累積判定だと緩和が無意味じゃぁ――と思うと、さにあらず。今、対称協調判定の下位単独判定を緩和しているだけなので、対称協調判定全体は留保になって、しかも例えば一人だけが失敗、他の二人が成功しているところを緩和してやれば、他の二人の成功は次にスライドして適用される。結果、次の判定は緩和した一人だけがサイコロを振るので、確率 75% で作業が進行するのだ。 というわけで、ちょっと工夫をすると魔術は累積判定の結果を質の観点からも良くすることができる。ちなみに、こういうことがあり得るからこそ、日頃から〈性格〉ロールプレイをしては{感情}を累積し、必要な時には惜しみなく緩和と増強を行うべきである。 ※5: 状況としては連日徹夜、〈オロナミンCと友人、弱点〉状態とでも形容すべきか。当然、小人さんが仕事をするので割に凡ミスが多発する。互いにクロスチェックをしてると、ミスをつつきまくる展開になるので〈縁故〉の危機とも言えよう。お疲れ様です。 ※6: 〈才気活発、弱点〉。なぜ弱点かと言うと、土壇場のアイディアに頼って準備をおろそかにするから。 さて、ルカレシュは天宮の役人にして星見たるブゼリアンの帰依者。ライバンス広域市市庁府河川局水理課に勤務するしがない係長である。彼の目の前には、先日来発注していた河川改修事業に関する調査報告書が並んでいる。業務は、この書類に目を通して要求仕様を満たしているかの確認。 というわけで、〈ダラ・ハッパ語(火炎語)読み書き〉と〈数学〉の混合判定を単位に、{調査報告}に対して単純比較判定を行うことで能力値を推定せねばならない(※7)。 で、これがめんどくさい仕事なのである。なにしろ、要求仕様が能力値 18 だから、こちらも連続で9回以上の成功を収めなければならない(一応業務なので、途中で失敗したら緩和して調査を続行する義務もある)。 さて、ぼやいてみても仕事は減らぬので、あきらめて業務に取りかかることとする。ルカレシュは両方の能力に楽々マスタリーを有しているので、判定単位5回の短縮判定で(主に PL が)楽をしようと試みた。単調判定側に成功したので、まず 5R0 の達成度を生成する。すると、書類は3回目で留保。 留保? なんじゃそりゃ、と驚き、ルカレシュは改めて書類の状態を調査した。すると、なにやら変な形式の書類である。具体的には、本編と附則文書が妙な相互参照をしているのだ。 怪しい。 ルカレシュはため息をつくと、河川局の透明円蓋(※8)を仰ぎ、ひとしきり愚痴を述べた後に課の年次割り当て魔力残量を確認し、儀式魔術を開始する。見よ、不滅の皇帝、人類の黄金の希望、(以下残り98の重要な称号と 1,000 のそれほど重要でもない称号省略)偉大なる皇帝イェルム ……かくして二度の対称対立判定によりめでたく{調査報告}は陥落した。 さて、この報告書、なぜか本編{調査報告 17}と附則{調査報告 16}が常に対称協調判定を試みるよう設定されているのである。なんじゃそりゃ。能力値 17 は成功数6、16 は成功数4だから、普通に能力値 18 (成功数9)の書類を作るより手間を要しているではないか。 とりあえずひとしきり首をひねった上で、書類作成者を絞り上げて経緯を吐かせた結果、大体の構造が判明した。ダンバルは、締め切りが残り6日の段階で対称協調判定による完成をあきらめ、即座に三人が単純累積判定をする形式に変更。そして、一番デキが良さそうな書類で附則文書を構成し、協調判定の形式でまとめて編集したのである※10。 さて、全体像が分かったところでルカレシュは難しい判断を迫られることになる。たいそう迷惑なことに、要求仕様は「能力値 18 以上、「相当」」なのだ。 この書類、失敗・成功率だけを見るなら、1:18.5 程度。ほとんど能力値 19 の文書と見分けが付かない。能力値 18 よりも性能は上か? が、世の中そんなに甘いわけがないのである。対称協調判定は、留保の可能性がつきまとうのだ。この場合、大体3回に一回くらいの確率でこの文書は留保を出力してくる。 さて、河川局の内部でこの文書がどのように使われるかというと、この文書を一時情報として人々は計画を立案することになる(※11)。すると、この文書が留保をする(※12)たびに、時間が失われることになる。更に、判定回数が1.5倍に伸びるため、最終的ファンブルの可能性が 50% 強上昇するのである。まて、それは悪くすると(※13)人が死にかねないぞ。 さて、ではルカレシュはどうすれば最善だろうか。 ルカレシュはゲンナリした。こんなことになるなら、もっと早くに連絡を受けていれば幾らでも対処の仕様があったのだから。ちょっと〈縁故〉を通じて{信用}を発行し、締め切りを数日延ばすだけですんだ話ではないか! さて、ルカレシュはブゼリアンの官僚に漏れず、自分を〈誠実〉で〈善良〉な人間だと思っている。さらに、なんと驚くべきことに、彼は客観的にも〈誠実〉で〈善良〉な人間だったのだ!※14 とにかく、とりあえず書類は受け取り、そのまま実際に書類を使用する部局に回さねばならないだろう。しかし同時に、書類の写本を作り、写本の方で書類作成を続行させ、完成時点で先に送り出した書類と差し替えるのが最良であろう。 問題は、で、誰がそれを写本するのか、である。総成功回数 10 回分の文章を、誤り無く写す。 ……かくして、ルカレシュは泣きながら《Tireless Hand/疲れを知らぬ手》、《Everfull Quill/尽きぬ羽ペン》で増強しつつ、《Repel Inkblot/インクの染み抵抗》を緩和に用いて残業するハメになったのであった※15。 なぜ、ブゼリアンには《文書複製儀式》が無いんだ〜〜!※16 ……こうして、哀れな一官僚の嘆きを吸い込みながら、今日もイェルム ここはライバンス、ダラ・ハッパトライポリスの中心、イェルム またの名を、"皇帝達の都"。 ※7: 基本的に、情報収集は〈知覚系〉+〈解析系〉の二つが関与することが多い。今回は両方とも等価ということで、混合比 10:10 の混合判定で処理することにする。 で、これではめんどくさいので、単純累積判定を〈ダラ・ハッパ語読み書き〉と〈数学〉に対して行い、両者の単純平均を成功回数とみなす。どうせ、多数回振ったら大体半分ずつが判定に寄与するのだから。 ※8: ブゼリアンの神殿は、いつでも天体を監視できるようドーム天井に穴が開いているか、あるいはこのように透明ガラスで覆ってある。 ※9: 日本語に訳すと帳簿監査であるが、原語は books だから、当然書籍の監査もできるだろう。というか、割に HW/HQ の魔術は翻訳できねぇ魔術が多い。だから形式言語 ※10: 能力値 15 の場合、単純累積判定を三人がかりでかければ、結構確率的には能力値 16 程度のクーポンは作れるのである。この辺、増強と緩和をかませるともう少し高速に実行できるだろう。 ※11: もちろん、マスタリーを有さない程度の情報に過ぎないから、いつまでも完全に真とは言い切れない。故に、補助的に用いられる文書だろうと予想はされる。 ※12: つまり、文書を読んでいる人間が本編・附則文書間に存在する矛盾点を一生懸命読み解いているわけだ。 ※13: もちろん、多くは誰かの対称協調判定によるチェックか、あるいは緩和によってカバーされるだろうが。しかし、ハインリッヒ則はバカにしてはならないのだ。 ※14: なにしろ、カルトの美徳が保守的、衒学的、正確、想像力欠如ときてるのだ。ドコが美徳なんですか? ※15: 〈ダラ・ハッパ語読み書き〉にマスタリーがあるので、この場合は可能な限り〈性格〉から回した{感情}を使用しつつ増強して速度を上げてかかるのがよいのである。合掌。 ※16: ブゼリアンと同様、《読み書き》の《神力》を持つランカー・マイには《文書複製儀式》がある。もしかすると、ランカー・マイのカルトシークレットなのかもしれないが……まさかねぇ。 2006年04月06日 23:56 Cato つまり、資本力に自信のない中小企業による、公共事業への食い込みに際して行われた「偽装」(不誠実な書類)をチェックするため、ルカレシュ氏は偉大なる「イェルム どこの「姉歯」ですか?このシナリオは。 つまり、こういう書類戦闘「も」できるシステムというわけですね? いや、ブゼリアンのプレイヤーが活躍するのって、珍しい気がするもんですから…。 次はさしずめ、下請け丸投げのロカーノウス系大企業と、ライバンス公正取引委員会の死闘でしょうか。 追記) ダンバルの報告書の調査終了、複写後の、ルカレシュ氏の一言について。 「太陽が黄色かったから…」 2006年04月07日 19:22 Vampire.S
おっしゃる通りです。合掌。いつもお疲れ様です。
姉歯役は、実はいないんですよね。加えて、あの時の国土交通省には、あまり〈誠実〉で〈善良〉かつ〔有能な官僚〕だった人がいたようには見えないのですけど、どうなんでしょう。 もっとも、この場合ライバンス市は地方公共団体なので、またちょっと違うんでしょうけど。この場合、圧力をかけた銀の影君主領府に相当するのかなぁ?
的確なまとめ、ありがとうございます。 ね? ゲ ー ム や り た く な っ て き ま せ ん か ? ↑注:普通の人はこういうゲームはしたくないです
あ、良いシナリオですね。ロカーノウス系大企業は〈縁故〉で攻撃してくるところ、ライバンス公正取引委員会は〈法令〉と〈規律〉で対抗するんですね。大変だ。
これね、ホントに可哀想なのは、分かると思うけどルカレシュ氏の努力って、誰にも評価されない点なんだよね。 なにしろ、ダンバルにしてみれば要求仕様の曲解をしたら、赤字をさらに割り込む(作業量が追加)仕事を押しつけられちゃってるし、さらに言うなら、ルカレシュの職掌からすると「通すべきか、通さないべきかの指針が上位から来てないのが問題」で、しかしながら公共の利益を鑑みてあえて自発的に残業してるだけなんだもの。 だからこそ、筆記作業にはあえて R1 強度魔力(〈係長〉という〈縁故〉を通じたライバンス市庁府年間魔力予算にたいするアクセス)を絶って、自分の資源である{誠実}と{善良}、それにもちろん{睡眠時間}を消費してるわけで。 |